ひとり焼肉、酒と本

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 どうですか。ハナ金。
 休み前の夜。たのしい夜。
 まあ仕事はいろいろで、土日が休みと限らないかも知れませんが、なんだか楽しい週末でしょうか。世間が週末気分だ。と、自分もそんな気分になってくる。
 ぼくは、まあ、今日、金曜日は休みなんですけど明日は仕事だ。しかし、飲み屋街の一角に住んでいるからか、なんだか、ハナ金な気分です。
 世間でいうとことの日曜夜的なバイオリズムなはずですがそうはならず、ハナ金気分。お得です、飲み屋街住まい。
 なにせいつでも、ほろ酔い(あるいはへべれけ)で幸せそうな人たちが歩いている。ごきげんじゃないか。
 ぼくも飲みにでかけざるを得ない。奥さん用事で今夜家にいないし、景気よく飲みにでかけざるを得ない。

 

 ひとり飲み。どうですか。ひとりで飲むというおこない。ぼくはあんまししない。なんか、あの、わからん。いや、ひとりで飲み屋にいくのに抵抗あるとかじゃない。それは、店によるので、ひとりで行っても居心地良い店ってあるので、それはいいんですけど、あの、ひとりで飲んでるときに何してたらいいのかわからん。
 友だちがやってる店とかもあるけど、それはひとり飲みとはちょっと違う。本当にひとりで飲むとき。
 やー、なんか、まあ、スマホとかいじりながら飲むのが自然な風景な気はしている。じっさいそういう風景はよく見かける。それも良い。
 あとなんだろ。店の人と喋る。文庫本よむ。雑誌よむ。飲み食いに集中する。ぼーっとする。
 こんなところか。
 良いんですけどね。でも、なんか、基本的に外呑みのときは、奥さんとか誰かと行くのが常なので、おしゃべりしながら、こう、乾杯しながら「たまらんね」「たまらんな」とか言いながら呑むのが好きなので、ひとり呑みのときの居住まいに、こう、必然性という名のイグニッションをうまくイメージできず、あぐねる。ひとりのみをしあるねる。
 という、ここまではあれです。アタマで考えたリクツに過ぎず、「やってみたら、なんか良かった」という限りなくソリッドな結果によって、いともたやすく、綿菓子のように溶けて消えるものなのだ。そういうリクツは。

 

 あの、さっきひとり呑みしてきて、すげー楽しかった。良い気分になった。
 奥さんが用事でいないので、とはいえ、街はハナ金で楽しそうだしなーという、弱き理由をガソリンに、ちょっと気になってた近所のひとり呑みしやすそな焼き肉屋にいってみた。
 あの、カウンター席があってそこにひとつひとつコンロと焼き網と煙吸うやつがついてるのだ。しかも「ほろ酔いセット」なるメニューがあって、あの、つまり「生ビール、ハラミ、てっちゃん、キャベツ」で890円という、メニューがあって、ざるを得ない。えっめっちゃええやん、という感情を抱かざるを得ないです。こまる。強い。強くてこます。コナミコマンドか。グラディウス的にいうとオプション、レーザー、バリアにスピード、ミサイル付きみたいなことで、強い。
 おこなった。なので、おこないました。今日はそこでその「ほろ良いセット」をおこないました。
 あの、なんか、たぶんすごい一人焼き肉を推奨してる店なんだろうなあ、という感じでぼくもカウンター座ったんですけど、まわりもほぼひとり焼き肉。仕事終わりかな。慣れた様子で注文して焼いて呑んで、すごしてる。いいな。
 で、注文がタッチパネルなのも良い。そんな大きな店じゃないんですけど、あえてのタッチパネルなのも良い。集中できる。ひとりに。ひとりで、焼き、食み、呑むことに。「マグ……いや、タマゴだ」とか迷ってもいい。自由。
 んで、まあ、ほろ酔いセットで、ほろ良いを進行していく。
 ハラミを焼き、頃合いに、食み、ビールで流し込む。ふだん牛肉とかあんまし食べないし、あの、スペシャルな夜な感じが高まる。儀~。
 儀です。これは。炎、焼き肉、ビール。儀式である。
 焼いた牛肉と生ビール、そして炎の熱気というRIALが、「ひとり呑みがわからない」という理性にTNTを仕掛け、ぼくの中の工員がスイッチを押しエクスプロードした。OISHIIKARANANDEMOII。そういう轟音とともに爆発した。

 

 とはいえ、前述した、ひとり呑みのとき何してたらいいかわからない、という問題には、対策を建てた上で来店した。
 ぼくには、お酒と本を愛する奥さんが居おり、我が家の本棚には、平松洋子久住昌之のエッセイの文庫がある。この中から、まさにドンピシャな「ひとり飲み酒 肴かな」(著:久住昌之)をもって行った。
 肉を焼き、本を読み、肉を食べてビール飲んでキャベツ食べて、本を読んだ。せわしないな。せわしなかった。
 本の内容はめっちゃ合う。孤独のグルメでおなじみの著者のひとり呑みエッセイだ。合わないわけない。でも、飲み食いしつつ読書ってせわしない。
 あの、ぼくお箸は左利きなんですよね。でも、ビール飲んだり、文庫本もつのは右手なんですよね。なので、両の手の役割分担と、肉、ジョッキ、トング、キャベツとかの配置が大事。肉が焼ける間に、フォーメーションを探る。本に集中できる比重で組むと、お箸をつかう方に食材はあつまる。ビールは本と同じ右にもってくる。いや、正直、お箸以外、両手どっちでも良い。利き手じゃないとジョッキ持てないとかないし。でもどっちがスムーズか、どっちか無心に呑みを楽しめるか、を、探る。というか、こういうのも、なんか楽しい。たぶん、こういうフォーメーションは店ごとに最適解はかわるだろう。パズルのよう。楽しい。
 で、まあ、フォーメーションも決まると、読書焼き肉がすすんでゆく。で、結局酔ってくると、なんか慣れてきたのかあんまし考えなく成ってきたのか、本は両手どっちも、都合の良い方の手でもつようになり、空いた手で肉を焼きビールを呑んだ。
 やはり、こう、RIALが、C4でリクツを爆破した。
 そうして、小さな酒宴もたけなわだ。2杯目は、エッセイに書いてたので、焼酎ロックだ。牛レバーとのマリアージュ。良い冬の夜……愛慕〈エモ〉……。

 

 結局、追加注文とかして、しっかり満足したわけですが、それでも2000円ちょいです。なんかすげー「食べログ」めいた感じですが、そういえば店名一回も書いてない。「こいろり」だ。大阪・天満の「こいろり」。
 しかしそういうことが言いたいんじゃない。その店はすげー良かったがその店が良かったってことが言いたいんじゃない。主題じゃない。なんか、こう、おとなにとって娯楽は多くないと思っていて、いや、娯楽の種類はめっちゃあるんですけど、なんか、いろいろ考えちゃって、素直に楽しめないというのを差し引くと、娯楽は多くないと思っていて。
 しかし、そんな中に、ひとり呑みはいかが? という話だ。映画、まんが、ゲーム、フットサル、カラオケ。娯楽はいろいろあるけど、なんか、ひとり呑みも良かった。本よみながら飲み食い、案外たのしいし、こう、フォーメーション的にもあんまし困らなかった。
 あの、最近「錆喰いビスコ」というハイボルテージなラノベ読んでまして、そういうの読みながらも良いなと思った。ひとり呑みのエッセイも良いが、そうでなくても良い。ぼくは、今、たのしい。
 おとなが、ひとりの時間の使い方において、「完成した」と評せることは多くないのではないか。しかし、今宵は完成した。ひとりだけれど、良い夜です。
 ハナ金。明日は仕事だけど、束の間でもこんな気分になれる。


 まあ、なんでもいいんですけどね。とも思う。楽しい気分になれるなら。これ読んでるあなたが、ハナ金でもそうじゃなくても、なんかわるくない気分でいるのなら。
 ひとりだけど、ほろ酔いだけがアクセス権限もつ次元から、そんなことを思ってます。未来は今は置いといて、良い夜を!

 

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